第11話|本当に手術受けてくれるの?

※この記事は、私たち夫婦の体験談です。
検査結果や治療方針には個人差があります。
医療的な判断が必要な場合は、専門の医療機関へ相談してください。

夫が再受診した日。

病院が終わったあと、
夫から電話がありました。

電話越しに、夫は言いました。

「手術受けるよ」

私はびっくりしました。

再受診の前、
手術の話をした時に、夫は

「怖いに決まっとるやん」

「受けなくていいなら受けたくないな」

と言っていたからです。

怖いはずなのに。
本当は受けたくないはずなのに。

それでも夫は、
電話で「受けるよ」と言ってくれました。

私はすぐにうまく言葉にできなくて、

「帰ってから、ふたりで話そうね」

とだけ伝えました。

これは、
夫が手術を受けると決めてくれた日。

そして私が、
夫の決意に心から感謝した日の話です。


手術は、怖いものだと思っていた

精索静脈瘤について調べると、
治療の選択肢として手術が出てきました。

もちろん、
手術をすれば必ず結果が良くなると
決まっているわけではありません。

でも、夫の場合は
手術で改善の余地があると説明されたそうです。

私の中には、
正直な気持ちとして、

受けてくれたらいいな。

という思いがありました。

少しでも自然妊娠の可能性が広がるなら。
少しでも前に進めるなら。
できることがあるなら、やってみたい。

そう思っていました。

でも、手術を受けるのは夫です。

怖い思いをするのも夫。
痛い思いをするのも夫。
術後に大変な思いをするのも夫。

だから私は、
簡単に「受けてほしい」とは言えませんでした。


それなのに、夫は「受ける」と言ってくれた

電話で夫から

「手術受けるよ」

と聞いた時、
私は本当に驚きました。

夫は痛みに強いタイプではありません。

手術の話をした時も、
怖いと言っていました。

受けなくていいなら受けたくない。

そう言っていました。

だから、もし本当に手術をすすめられたら、
夫はすごく迷うだろうと思っていました。

でも夫は、
病院で話を聞いたその日に、
自分で受けると決めてくれていました。

電話越しの声は、
少し落ち込んでいるようにも聞こえました。

でも、逃げている感じではありませんでした。

怖いけど、
前に進もうとしてくれている。

そんなふうに感じました。


その日の夜、焼肉屋さんで話した

その日の夜、
私たちは近所の焼肉屋さんへ行きました。

病院で聞いた話を、
ちゃんと聞きたかったからです。

電話だけでは、
私の気持ちも追いつきませんでした。

いつものように席に座って、
お肉を焼きながら、
夫から再受診の話を聞きました。

精索静脈瘤が両側にあったこと。
手術で改善の余地があると言われたこと。
先生から手術をすすめられたこと。

そして夫は、
手術の日程についても話してくれました。

病院に空きがある日を、
先生に聞いてきてくれていたそうです。

再受診から、
一か月後くらいの日程でした。

私はそれを聞いて、
また驚きました。

手術を受けると言ってくれただけでも
十分すぎるくらいありがたかったのに。

もう日程のことまで、
ちゃんと考えてくれていたんだ。

そこまでしてくれているとは、
思っていませんでした。


「本当に手術受けてくれるの?」

焼肉屋さんで、
私は夫に聞きました。

「本当に手術受けてくれるの?」

すると夫は、

「うん。怖いけど、受けて改善する可能性があるんだったら受けるよ」

と言ってくれました。

お肉が焼ける音がしているのに、
私はしばらく言葉が出ませんでした。

怖いと言っていた夫が、
自分で手術を受けると決めてくれた。

日程のことまで聞いてきてくれた。

そのことが、
思っていた以上に大きくて。

私はやっと、

「ありがとう」

と伝えました。

その言葉しか出てきませんでした。


本当に感謝しかなかった

もちろん、
申し訳なさがまったくなかったわけではありません。

怖いだろうな。
痛いだろうな。
術後も大変だろうな。

そう思いました。

妊活のために、
夫が手術を受ける。

その事実は、
軽いものではありませんでした。

でもこの時の私は、
申し訳なさよりも、
感謝の方がずっと大きかったです。

私が無理に言ったわけではなく、
夫が自分で受けると決めてくれた。

怖いと言いながらも、
改善する可能性があるなら受けると
言ってくれた。

そのことが、
本当にありがたかったです。


夫の決意を感じた

それまで私は、
どこかで自分ばかりが妊活を進めているように
感じていました。

排卵日を気にするのも私。
病院の話を切り出すのも私。
先のことを考えて不安になるのも私。

そんなふうに感じて、
苦しくなっていた時期がありました。

でもこの日、
夫の見え方が少し変わりました。

夫は夫なりに、
ちゃんと考えてくれていた。

言葉にするのが得意ではなくても、
行動で前に進もうとしてくれていた。

手術を受けると決めたこと。
日程のことまで聞いてきてくれたこと。

そこに、
夫の決意みたいなものを感じました。


今度は、私が支えたいと思った

夫が手術を受けると決めてくれたからには、
私もちゃんと支えたいと思いました。

手術の日まで、
少しでも不安を軽くできるように。

術後に痛みがあるなら、
できるだけそばで支えられるように。

仕事や生活に影響があるなら、
一緒に考えられるように。

夫だけが頑張ることにならないように、
私もできることをしたいと思いました。

これまでは、
病院へ行ってほしい。
ちゃんと診てもらってほしい。
前に進んでほしい。

そんな気持ちが強かったです。

でもこの日、
夫はちゃんと前に進もうとしてくれているんだと感じました。

だから今度は、
私が夫を支える番だと思いました。


手術日が、現実になった

手術の日程を聞いたことで、
手術は一気に現実になりました。

いつか受けるかもしれない手術。

ではなく、

この日に受けるかもしれない手術。

そう変わりました。

怖さはありました。

本当に大丈夫かな。
痛みはどれくらいあるんだろう。
術後はどんな生活になるんだろう。

考え始めると、
不安はたくさんありました。

それでも、
夫がそこまで話を進めてきてくれたことが
本当に嬉しかったです。

これまで、病院の話をするだけで
気まずくなっていた私たちが、
ここまで来たんだ。

そう思いました。


今振り返って思うこと

あの日、
夫が「手術受けるよ」と言ってくれたこと。

焼肉屋さんで、

「怖いけど、受けて改善する可能性があるんだったら受けるよ」

と言ってくれたこと。

私は今でもよく覚えています。

手術を受けることが、
その時点で正解だったかどうかは分かりませんでした。

手術をしたからといって、
必ず結果が良くなると決まっていたわけでもありません。

それでも、
夫が自分の身体のこととして受け止めて、
夫婦で前に進むために決めてくれたことが、
本当にありがたかったです。

この日、私は
「夫に頑張ってもらう」だけではなく、
「私もちゃんと支える」と決めました。

怖い思いをするのは夫。

だからこそ、
ひとりで頑張らせたくない。

そう思いました。


同じように悩んでいる人へ

パートナーが検査や治療に向き合ってくれること。

それは、
当たり前ではないのかもしれません。

もちろん、妊活はふたりのことです。

でも、
身体に痛みや負担がある選択をする時、
そこには本人にしか分からない怖さがあります。

だからこそ、
相手が向き合ってくれた時は、
まず「ありがとう」と伝えることも
大切なのかもしれません。

私たちは完璧な夫婦ではありません。

たくさんすれ違ったし、
何度も泣きました。

それでもこの日は、
夫が一緒に前に進もうとしてくれていることを、
ちゃんと感じられた日でした。


次のお話

この日、私は
夫が一緒に前に進もうとしてくれていることを
ちゃんと感じました。

だからこそ、
手術の日まで私も支えようと思いました。

でも、手術に向けて進み始めた頃、
別の検査結果で
また不安になる出来事がありました。

次のお話では、
ウレアプラズマ陽性と言われた日のことを書いています。

▶ 第12話|ウレアプラズマ陽性と言われた日


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