第10話|手術した方がいいかもしれません

※この記事は、私たち夫婦の体験談です。
検査結果や治療方針には個人差があります。
医療的な判断が必要な場合は、専門の医療機関へ相談してください。

夫が男性ブライダルチェックを受けてから、
再受診するまでに少し時間が空きました。

本当は、早めに診てもらった方がいいことは分かっていました。

でも、病院の話をするたびに気まずくなったり、
私が言うことで夫を追い詰めているように感じたりして、
なかなか前に進めませんでした。

それでも、何度か話し合って、
夫はもう一度病院へ行くことになりました。

再受診の日、
夫はひとりで病院へ行きました。

私は仕事でした。

男性不妊の可能性。
精索静脈瘤の可能性。
手術が必要かもしれないという話。

分かっていたはずなのに、
その日が来ると、やっぱり落ち着きませんでした。

これは、夫が再受診をして、
「手術」という言葉が現実になった日の話です。


病院へ行けたことに、少しほっとした

夫が再受診すると決まった時、
私は少しほっとしました。

やっと前に進める。

そんな気持ちがありました。

ずっと気になっていたことを、
ちゃんと先生に診てもらえる。

精液検査の結果も、
精索静脈瘤の可能性も、
このまま曖昧にしなくて済む。

そう思うと、安心もありました。

でも同時に、怖さもありました。

もし本当に精索静脈瘤だったら。
もし手術をすすめられたら。
もし自然妊娠がもっと難しいと言われたら。

病院へ行けば分かる。

でも、
分かってしまうことも怖かったです。


病院にいる夫からLINEが来た

再受診の日、私は仕事をしていました。

でも頭のどこかでは、
ずっと夫の病院のことが気になっていました。

どうだったかな。
何を言われているんだろう。
やっぱり手術の話になるのかな。

そんなことを考えていた時、
夫からLINEが来ました。

そこには、

「やっぱりよくないって」

と書かれていました。

その短い一文を見て、
胸がぎゅっとなりました。

やっぱり、そうなんだ。

男性ブライダルチェックの時点で、
良くない結果だとは分かっていました。

でも、再受診で改めてそう言われると、
現実として突きつけられた感じがしました。

私は、

「後で話聞かせてね」

と返信しました。

本当はすぐに詳しく聞きたかったけれど、
仕事中だったこともあり、
その場ではそれ以上聞けませんでした。


電話で聞いた、再受診の結果

病院が終わったあと、
夫から電話がありました。

電話越しの夫の声は、
落ち込んでいるように聞こえました。

でも、取り乱しているわけではなく、
どこか淡々としていました。

夫は、病院で言われたことを話してくれました。

精索静脈瘤が両側にあること。
手術で改善の余地があること。
先生から手術をすすめられたこと。

その言葉を聞きながら、
私は静かに受け止めるしかありませんでした。

やっぱり、そうだったんだ。

そう思いました。

でも同時に、
「手術」という言葉がはっきり出てきたことで、
急に怖くなりました。


手術の説明を聞いて、現実味が増した

夫から聞いた手術の説明は、
私にとってかなり現実的なものでした。

日帰りでできること。
局所麻酔で行うこと。
鼠径部を2〜3センチほど切って行うと説明されたこと。

詳しいことをすべて理解できたわけではありません。

でも、
ただ薬を飲むとか、
少し生活を変えるとか、
そういう話ではないことは分かりました。

身体を切る。
痛みがあるかもしれない。
術後の生活にも影響があるかもしれない。

妊活のために、
夫が手術を受けるかもしれない。

その現実が、
電話越しに一気に近づいてきました。


夫は「手術受けるよ」と言ってくれた

私は、夫がどう思っているのか分かりませんでした。

手術と聞いて怖いのか。
受けたくないのか。
迷っているのか。

そう思っていたら、
夫は電話で言いました。

「手術受けるよ」

正直、私は少し驚きました。

再受診する前、
私たちは手術について話したことがありました。

その時、夫は言っていました。

「怖いに決まっとるやん」

「受けなくていいなら受けたくないな」

そう言っていたのを覚えています。

だから私は、
もし手術をすすめられたら、
夫はかなり迷うのではないかと思っていました。

でも電話の夫は、
落ち込んではいたけれど、
どこか覚悟を決めているように聞こえました。

怖くないわけではない。

でも、
前に進むために受けるしかない。

そんなふうに受け止めているように感じました。


受けてほしい。でも、申し訳なかった

夫が「手術受けるよ」と言ってくれた時、
私は安心しました。

もし手術で少しでも数値が良くなるなら。
もし自然妊娠の可能性が少しでも広がるなら。
できることがあるなら、やってみたい。

そう思っていたからです。

でも同時に、
申し訳なさもありました。

怖いだろうな。
痛いだろうな。
本当は受けたくないよね。

そんな気持ちが出てきました。

私は、正直、
手術を受けてほしいと思っていました。

でも、痛い思いをするのは夫です。

不安になるのも夫。
仕事や生活に影響が出るのも夫。
手術台に上がるのも夫。

そう思うと、
「受けてほしい」と思っている自分が、
少し怖くなりました。


夫の身体のことを、私が決めるみたいで怖かった

病院へ行ってほしい。

そう思っていました。

ちゃんと診てもらってほしい。

そう思っていました。

必要なら治療も考えてほしい。

そう思っていました。

でも、いざ手術をすすめられると、
その重さが急に変わりました。

夫の身体のことなのに、
私の願いが、夫を手術へ向かわせているような気がしました。

もちろん、実際に決めるのは夫です。

夫自身が電話で、
「手術受けるよ」
と言ってくれました。

それでも私は、
心のどこかで苦しくなりました。

私が子どもを望んでいるから。
私が早く動きたいと言ったから。
夫は手術を受けようとしてくれているのかな。

そんなふうに考えてしまいました。


妊活は、夫の身体にも向き合うことだった

それまで私は、
妊活というと自分の身体のことを考えることが多かったです。

排卵日。
生理周期。
おりものの違和感。
妊娠できるかどうか。

もちろん、夫の検査結果を見てからは、
男性不妊のことも考えるようになっていました。

でもこの日、改めて思いました。

妊活は、私だけの身体の話ではない。

夫の身体にも、
夫の不安にも、
夫の痛みにも、
向き合うことなんだ。

手術という言葉が出てきたことで、
そのことを強く感じました。


前に進めたはずなのに、心は軽くならなかった

再受診できたことは、
大きな一歩でした。

精索静脈瘤のことも分かって、
治療の選択肢も見えてきました。

何も分からないまま不安でいるより、
ちゃんと診てもらえてよかった。

そう思いました。

でも、心がすっきり軽くなったわけではありませんでした。

分かったからこそ、
次に考えなければいけないことが増えました。

手術を受けるのか。
いつ受けるのか。
仕事はどうするのか。
術後はどれくらい大変なのか。
本当に改善するのか。

前に進むことは、
安心だけではありませんでした。

新しい不安が出てくることでもありました。


今振り返って思うこと

あの日、夫が再受診してくれたことは、
本当に大きな一歩でした。

病院へ行くまでに、
私たちは何度もすれ違いました。

言い出せなかったり、
責めているようになったり、
泣いてしまったり。

でも、やっと病院へ行って、
ちゃんと結果を聞いて、
手術という選択肢まで見えるところに来ました。

それは、前に進んだということだったと思います。

ただ同時に、
私はまた別の葛藤を抱えるようになりました。

受けてほしい。
でも、言えない。

夫の身体のことを、
私が決めるようで怖い。

第10話は、
私たちにとって「手術」という言葉が現実になった日でした。

そしてここから、
私はまた新しい苦しさと向き合うことになります。


次のお話

第11話|本当に手術受けてくれるの?

精索静脈瘤の手術を受けると決めてくれた夫。
その日の夜、焼肉屋さんで「本当に手術受けてくれるの?」と聞いた私。
怖いはずなのに前に進もうとしてくれた夫への感謝と、今度は私が支えたいと思った日の話です。

▶ 第11話|本当に手術受けてくれるの?


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