第5話|「自然妊娠は難しい」その言葉を、まだ信じたくなかった

※この記事は、私たち夫婦の体験談です。
検査結果や治療方針には個人差があります。
不安がある場合は、自己判断せず医療機関へ相談してください。

「自然妊娠を期待するには非常に不良な結果です」

夫の検査結果には、
そう書かれていました。

正確には、
「自然妊娠は難しい」と
直接言われたわけではありません。

でもその時の私には、
その言葉が、

「自然妊娠は難しいかもしれない」

と言われたように感じました。

男性不妊についても、
精索静脈瘤についても、
その時の私はほとんど知識がありませんでした。

だからこそ、
すぐには受け止められませんでした。

「絶対に無理って決まったわけじゃないよね」

「まだ自然妊娠できる可能性はあるよね」

そう思いたかったのだと思います。

これは、夫の検査結果を見たあと、
不妊かもしれない現実を受け止めきれず、
少しずつ焦りが出てきた頃の話です。


その言葉だけが頭に残った

夫の検査結果を見た時、
正直、何がどれくらい悪いのかは
分かっていませんでした。

精液検査の数値。
精索静脈瘤の可能性。
精巣の石灰化。
手術の可能性。

知らない言葉がいくつも並んでいました。

その中で、
一番強く目に入ったのが、

「自然妊娠を期待するには非常に不良な結果です」

という言葉でした。

自然妊娠を期待するには、非常に不良。

その文章を何度見ても、
頭がうまく追いつきませんでした。

自然妊娠は難しいのかもしれない。
男性不妊なのかもしれない。
手術が必要になるのかもしれない。

そう考えるたびに、
胸の奥が重たくなりました。

でもどこかでまだ、

「でも、絶対じゃないよね」

と思っていました。

そう思わないと、
気持ちが保てなかったのだと思います。


まだ、信じたくなかった

その頃の私は、
男性不妊という言葉を
自分たち夫婦のこととして受け止めきれていませんでした。

結婚したら、
自然に子どもができるものだと
どこかで思っていました。

もちろん、
妊活が簡単ではないことは
頭では分かっていたつもりです。

でも、
いざ夫の検査結果に
厳しい言葉が書かれているのを見ると、
現実味が一気に増しました。

私たち、
本当に妊娠しづらいのかもしれない。

自然に授かることは、
難しいのかもしれない。

そう思うのが怖くて、
私は何度も心の中で打ち消していました。

まだ分からない。
まだ決まったわけじゃない。
まだ可能性はあるはず。

信じたくなかったというより、
信じてしまうのが怖かったのだと思います。


夫もショックを受けていた

夫も、
かなりショックを受けていました。

普段あまり弱音を吐かない人なのに、
その日はずっと静かでした。

そして、

「子どもできんかったらごめん」

そう言いました。

その表情を、
今でも覚えています。

まだ何も決まったわけではありません。

でも夫はもう、
自分のせいかもしれないと
感じているように見えました。

私も不安でした。

でも、
目の前の夫も傷ついている。

そう思うと、
自分の不安だけをぶつけることはできませんでした。

とにかく一緒に頑張ろう。

まずは、
できることを考えよう。

その時は、
そう思いました。


「できることからやってみよう」と話した

その日から、
私たちは今後のことを少しずつ話すようになりました。

病院へ行くのか。
再検査を受けるのか。
手術は必要なのか。
自然妊娠を目指せるのか。

はっきりした答えが出たわけではありません。

ただ、まずは

「できることからやってみよう」

という話になりました。

私はその言葉に、
少し安心しました。

何もできないわけじゃない。
まだ終わったわけじゃない。
これから考えていけばいい。

そう思いたかったのだと思います。

でもその一方で、
私の中では少しずつ焦りも出てきていました。


何もしないでいる方が怖かった

不妊の可能性があるなら、
少しでも早く動きたい。

自然妊娠が難しいかもしれないなら、
今できることを全部やりたい。

そんな気持ちが強くなっていきました。

気づけば、
妊活について検索する時間が増えていました。

排卵日のこと。
タイミングの取り方。
男性不妊のこと。
精索静脈瘤のこと。
妊活中にできること。

検索しても、
安心できる答えが見つかるわけではありませんでした。

でも、
何もしないでいる方が怖かったです。

ドラッグストアで葉酸サプリを見つけて、
「妊活」と書いてあるだけで
買ってみたこともありました。

今思えば、
私は“できること”を探していたというより、
不安を少しでも小さくする方法を
探していたのかもしれません。


夫との温度差を感じ始めた

一方で、夫との間には
少しずつ温度差も生まれていきました。

私は、

できることは全部したい。
早く病院に行った方がいい。
少しでも可能性を上げたい。

そんな気持ちでした。

でも夫は、
妊活をすると言ってはくれたものの、
まだ気持ちが追いついていないように見えました。

結婚したばかり。

その直後に、
自分に不妊の可能性があると言われたこと。

手術が必要かもしれないと言われたこと。

きっと夫の中でも、
整理できていないことが
たくさんあったのだと思います。

でもその時の私は、
そこまで夫の気持ちを想像する余裕がありませんでした。

私は、早く前に進みたかった。

夫は、
まず現実を受け止める途中だった。

同じ結果を見ているはずなのに、
見えている景色が少し違うように感じました。


私は先を急いでいた

私は昔から、
30歳までに子どもが欲しいという気持ちがありました。

だから、
妊娠しにくい可能性があると分かった瞬間、
急に時間がなくなったように感じました。

早く動かなきゃ。
今月からでも始めなきゃ。
できることをしなきゃ。

頭の中は、
そんな言葉でいっぱいでした。

でも夫は、
私ほど具体的に子どもの時期を
考えていたわけではありませんでした。

子どもが欲しくないわけではない。

でも、
結婚してすぐに妊活や不妊の現実を突きつけられて、
私と同じスピードで前を向ける状態では
なかったのだと思います。

今なら、少し分かります。

でも当時の私は、
夫が立ち止まっているように見えるたびに、
不安になっていました。


「一緒に頑張ろう」の中身が違っていた

私にとっての
「一緒に頑張ろう」は、

調べること。
病院のことを考えること。
排卵日を意識すること。
今できる行動を増やすこと。

そういう意味に近かったと思います。

でも夫にとっては、
まず結果を受け止めることだけでも
大きかったのかもしれません。

手術が必要かもしれない。
自分の体に原因があるかもしれない。
子どもができにくいかもしれない。

その現実を受け止めるだけで、
精一杯だったのかもしれません。

同じ
「妊活を始めよう」
という言葉でも、
私たちの中身は少し違っていました。

私は先に進みたかった。

夫は、
まだ気持ちを整理している途中だった。

そのズレに、
この時の私はまだ気づけていませんでした。


今振り返って思うこと

この頃の私は、
とにかく焦っていました。

不妊の可能性があるなら、
早く動くしかない。

自然妊娠が難しいかもしれないなら、
少しでも可能性を上げたい。

その気持ちは、
今でも間違っていたとは思いません。

でも、
夫も同じスピードで受け止められるとは限らない。

そのことを、
当時の私はあまり考えられていませんでした。

夫は夫で、
自分の検査結果に傷ついていた。

私は私で、
未来が急に不安になって焦っていた。

どちらかだけが悪かったわけではなく、
お互いに余裕がなかったのだと思います。


このあと、すれ違いが増えていった

検査結果をきっかけに、
私たちは妊活について考えるようになりました。

でも、
考え始めたからといって、
すぐに同じ気持ちになれたわけではありません。

排卵日のこと。
タイミングのこと。
病院のこと。
手術のこと。

どれも大事な話なのに、
話すたびに少し気まずくなることがありました。

私は焦っている。
夫はまだ追いついていない。

その温度差が、
少しずつ私たちの間に出てくるようになりました。

そして次に、
私は夫からある言葉を言われることになります。

「なんか、義務感があって嫌」

その言葉を聞いた時、
私は思っていた以上に傷つきました。


次のお話

次のお話では、
男性不妊の可能性が分かったあと、
私たちが妊活を始めようとして
すれ違った日のことを書いています。

少しでも可能性を上げたくて、
排卵日を伝えて、自分から誘った日。

夫から返ってきたのは、

「なんか、義務感があって嫌」

という言葉でした。

▶ 第6話|「義務感があって嫌」と言われた日


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こちらに時系列でまとめています。

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