第6話|「義務感があって嫌」と言われた日

※この記事は、私たち夫婦の体験談です。
妊活の進め方や夫婦の向き合い方には、それぞれ違いがあります。
医療的な判断が必要な場合は、専門の医療機関へ相談してください。

夫の検査結果で、
男性不妊の可能性が分かってから、
1〜2週間ほど経った頃でした。

私たちは、

「今月から妊活を始めてみよう」

と話していました。

自然妊娠を期待するには非常に不良な結果。
精索静脈瘤の可能性。
手術が必要かもしれないという話。

まだ分からないことだらけでした。

でも私は、
少しでも可能性を上げたいと思っていました。

だから排卵日を確認して、
自分から夫に伝えました。

その時、夫に言われた言葉があります。

「なんか、義務感があって嫌」

その一言が、
思っていた以上に胸に刺さりました。

これは、妊活を始めたばかりの私たちが、
初めて大きくすれ違った日の話です。


少しでも可能性を上げたかった

男性不妊の可能性が分かってから、
私の中では焦りが大きくなっていました。

自然妊娠が難しいかもしれないなら、
今できることをしたい。

少しでも可能性があるなら、
その可能性を逃したくない。

そう思っていました。

排卵日を意識するようになったのも、
その頃からです。

アプリを見て、
この日あたりかなと確認する。

妊活について調べて、
タイミングの取り方を調べる。

今思えば、
私はかなり焦っていたと思います。

でもその時は、
焦っているというより、
自分にできることを必死に探している感覚でした。


自分から誘うのは、思っていたより勇気がいった

排卵日が近づいて、
私は夫に伝えました。

「今月、この日あたりみたい」

それだけでも、少し緊張しました。

義務っぽく聞こえないかな。
プレッシャーにならないかな。
嫌な気持ちにさせないかな。

そんなことを考えました。

でも、言わないと始まらない。

そう思って、
自分からタイミングを取ろうと伝えました。

妊活だから。
必要なことだから。
ふたりのことだから。

頭ではそう思っていました。

でも、自分から誘うのは、
思っていたよりずっと勇気がいりました。

だからこそ、
夫の反応が怖かったのだと思います。


「義務感があって嫌」

その時、夫に言われました。

「なんか、義務感があって嫌」

その言葉を聞いた瞬間、
私は固まってしまいました。

責められたわけではないと思います。

夫もきっと、
自分の気持ちをそのまま言っただけだったのだと思います。

でも私は、
すごくショックでした。

恥ずかしさもありました。

自分から誘ったこと。
排卵日を伝えたこと。
少しでも可能性を上げたいと思っていたこと。

その全部が、
急にひとりよがりだったように感じました。

私は必死だったのに。
でも夫には、義務感に見えていたんだ。

そう思うと、
胸がぎゅっとなりました。


気まずいまま、何も話せなかった

そのあと、
私たちは少し気まずくなりました。

何を話せばいいのか分かりませんでした。

私は傷ついていました。

でも、すぐに怒ることもできませんでした。

夫が悪いと言い切れるわけでもない。
でも、私は確かに傷ついた。

妊活を始めようとしているのに、
最初からこんなふうになるんだ。

そう思いました。

その日は、寝るまで別々に過ごしていました。

同じ家にいるのに、
空気が重い。

話したい。
でも話しかけるのが怖い。

そんな時間でした。


布団に入ってから、話しかけた

夜になって、布団に入りました。

私は、
このまま寝るのは嫌だと思いました。

気まずいまま終わらせたくない。
ちゃんと話したい。

そう思って、夫に話しかけました。

「さっきのことやけど……」

でも夫は眠そうで、
少しイライラした様子でした。

そして、こう言いました。

「なんで今話すん」
「さっき話す時間あったよね?」

その言葉にも、また傷つきました。

私は、
気まずくてすぐには話せなかっただけでした。

でも夫からすると、
寝る直前に重い話をされるのがしんどかったのだと思います。

今なら、少し分かります。

でもその時の私は、
やっと勇気を出して話しかけたのに、
突き放されたように感じてしまいました。


翌日、LINEで気持ちをぶつけた

結局その日は、
ちゃんと話し合えないまま寝ました。

でも私は、
気持ちがおさまりませんでした。

翌日、LINEで夫に気持ちを送りました。

かなり感情的だったと思います。

調べるのも、準備するのも、
気を遣うのも、話を切り出すのも、
全部私だけのように感じていました。

排卵日を調べるのも私。
妊活のことを考えるのも私。
タイミングを伝えるのも私。

夫は、
「妊活しよう」とは言うけれど、
実際に動いているのは私だけのように見えました。

私は、
その不満を夫にぶつけました。

本当は、責めたいだけではありませんでした。

でもその時の私は、
うまく言葉を選べませんでした。

寂しかった。
不安だった。
ひとりで頑張っている気がしていた。

その気持ちが、
怒りとして出てしまったのだと思います。


夫は、まだ気持ちが追いついていなかった

しばらくして、夫から返事が来ました。

そこには、夫の本音が書かれていました。

「正直、結婚して1か月で、まだ頭が追いついてない」

「子どもがほしい気持ちはあるけど、そこまで焦ってはいない」

その言葉を読んだ時、
私は少し黙ってしまいました。

夫は、
子どもが欲しくないわけではありませんでした。

でも、私と同じスピードで、
妊活や不妊の現実を受け止められていたわけでもありませんでした。

結婚してすぐ。

自分に男性不妊の可能性があると分かって、
手術が必要かもしれないと言われて、
そのまま妊活を始めようとしている。

夫にとっても、
急なことばかりだったのだと思います。

私は、
自分の焦りでいっぱいで、
夫の気持ちをちゃんと見られていませんでした。


本当にほしかったのは、同じ焦りではなかった

あの時の私は、
夫に同じ熱量になってほしいのだと思っていました。

でも今振り返ると、
少し違います。

私が本当にほしかったのは、
同じ焦りではありませんでした。

同じ不安の強さでもありませんでした。

ただ、
一緒に考えてほしかった。

私だけが排卵日を見て、
私だけが妊活を調べて、
私だけが言い出す。

その状態が、寂しかったのだと思います。

「どうしたらいいかな」

「今月はどうしようか」

「一緒に考えよう」

そう言ってほしかったのかもしれません。


妊活は、始めると決めたら同じ気持ちになれるものではなかった

私はどこかで、
妊活を始めようと決めたら、
夫婦で同じ方向を向けると思っていました。

でも実際は、違いました。

同じ検査結果を見ても、
同じ言葉を聞いても、
同じスピードで受け止められるわけではありませんでした。

私は、未来が急に不安になって焦っていた。

夫は、現実を受け止めるだけで精一杯だった。

そのまま妊活を始めようとしたから、
私たちはすれ違ったのだと思います。

妊活は、
身体だけの話ではありませんでした。

夫婦の気持ちの速度も、
ちゃんと見ないといけないものなのだと、
この時初めて感じました。


今振り返って思うこと

あの日の夫の言葉は、
今でも忘れていません。

「義務感があって嫌」

言われた時は、本当に傷つきました。

でも今は、
夫が私を傷つけたかったわけではないことも分かります。

夫は夫で、
どう向き合えばいいのか分からなかった。

私は私で、
焦りと不安でいっぱいだった。

お互いに、
相手の気持ちを想像する余裕がありませんでした。

私は、夫の気持ちに寄り添えていませんでした。

夫も、私の不安に寄り添えていませんでした。

だから、すれ違った。

そう思います。


同じようにすれ違っている人へ

妊活中、
排卵日の話をするだけで気を遣うことがあります。

タイミングの話をするだけで、
空気が重くなることがあります。

ふたりのことなのに、
言い出すのはいつも自分。

そう感じると、
すごく孤独になります。

でも、相手が協力していないように見える時、
もしかしたら相手も、
どう向き合えばいいか分からずに止まっているのかもしれません。

もちろん、
それで傷ついた気持ちが消えるわけではありません。

ただ、

「なんで分かってくれないの」

だけではなく、

「今、どこまでなら一緒に考えられそう?」

と聞いてみることも、
必要なのかもしれないと思いました。

私たちは、
最初から上手に妊活できたわけではありません。

何度もすれ違いながら、
少しずつ、夫婦で向き合う練習をしていきました。


次のお話

このあとも、
私たちはすぐに同じ方向を向けたわけではありません。

再受診した方がいいと分かっているのに、
私は夫に言い出せなくなっていきました。

「病院行かなきゃね」

たったそれだけの言葉が、
責めているみたいに聞こえたらどうしよう。

そう思って、言葉が止まるようになりました。

次のお話では、
男性不妊が分かったあと、
「病院行かなきゃね」が言いづらくなっていった頃のことを書いています。

▶ 第7話|「病院行かなきゃね」が言いづらくなった


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