第6話 「病院行かなきゃね」が言いづらくなっていった

検査結果の紙には、

「お子さんを希望される方は再受診をおすすめします」

そう書かれていました。

精索静脈瘤についても、
詳しく診てもらった方がいいと言われていました。

だから本当は、
早めにもう一度病院へ行った方がいい。

頭では分かっていました。

もちろん私は、
何度も彼に言っていました。

「病院行かなきゃね」

「今度予約しようね」

って。

彼もそのたびに、

「そうやね」

「今度行くよ」

とは言ってくれていました。

でも、
なかなか実際には動けないままでした。

最初は、
ショックが大きいんだろうなと思っていました。

でも、
時間が経つにつれて、
私もだんだんその話題を出しづらくなっていきました。

病院の話をすると、
なんとなく夫婦の空気が変わる気がしたんです。

少し重たくなるというか、
お互い気まずくなるというか。

楽しく過ごしていた空気が、
一瞬で現実に戻されるような感覚でした。

だから私たちも、
できるだけ普通に過ごそうとしていました。

一緒にご飯を食べたり、
出かけたり、
いつも通り笑って過ごす日もありました。

でも、
ふとした瞬間に検査結果を思い出してしまう。

そんな日々でした。

だから私も、
本当は不安でいっぱいなのに、
強くは言えませんでした。

彼が、
検査結果にかなりショックを受けていたのが分かっていたからです。

「もしかしたら手術かも」

そう言って落ち込んでいた彼に、

「早く病院行って」

とは、
どうしても言えませんでした。

もし本当に手術になったら。

痛い思いをするかもしれない。

これから先どうなるのかも、
まだ何も分からない。

私自身も不安だったし、
彼を追い詰めたくありませんでした。

そうしているうちに、
気づけば2ヶ月近く経っていました。

私は焦っていました。

この2ヶ月の間も、
私たちなりに見様見真似で妊活はしていました。

自然妊娠は難しいと言われながらも、
どこかでまだ期待している自分がいました。

生理予定日が近づくたびに、

「今回こそ違うかも」

と思ってしまう。

胸の張りがいつもより強い気がする。

お腹の痛みがいつもと違う気がする。

そんな小さな変化に期待しては、

「妊娠超初期症状」

「生理前との違い」

「着床した時の症状」

そんな言葉を何度も検索していました。

結婚と引っ越しが重なった時期だったこともあって、
その頃は生理周期が2週間ほどずれることもありました。

生理が遅れるたびに、
「もしかして」
って期待してしまう。

フライング検査をして、
陰性で落ち込んで。

それでも、
生理予定日を過ぎてからもう一回検査してしまう。

そんなことを繰り返していました。

でも結局、
生理が来る。

そのたびに、

「やっぱりできないよね」

って落ち込んでいました。

でも、
そんな気持ちは彼には伝えていませんでした。

彼も苦しんでいるのが分かっていたからです。

ある日、
私たちは久しぶりにちゃんと話をしました。

その時彼は、
ぽつりと言いました。

「俺も、かなりショックやった」

「結婚したばっかりなのに、急に妊活ってなって」

「正直、気持ちが追いつかんかった」

さらに、

「自然妊娠は難しいって言われてるのに、頑張る意味あるんかなって思ってた」

とも言いました。

私はその時初めて、
彼も彼なりに、
結果と向き合おうとしていたんだと知りました。

私だけが不安なんじゃなかった。

彼も同じように、
怖かったんだと思います。

そしてその日、
彼はこう言ってくれました。

「ちゃんともう一回病院行く」

その言葉に、
私は少しだけ安心しました。

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